6.河川敷の戦い 空は快晴だが、少し風が冷たい。 じっとしているには寒いけれど、動くのには調度いいくらいかもしれない。は獄寺が来るのを待つ間に銃のチェックを繰り返しながら、そんなことを思った。 の生活が落ち着いた週末に獄寺との勝負が行われることになった。人気の少ない河川敷を試合の場に選び、綱吉や山本も見に来るという。売り言葉に買い言葉で決まった勝負だったが、絶対に負けたくない。獄寺にも綱吉たちにも、10代目ファミリーの仲間だと認めて欲しい。は早く皆の中に溶け込みたかった。 「よぉ、来たぜ!」 「獄寺、綱吉たちも。おはよう、待ってたよ」 「さぁ、早速始めようぜ!」 「おっけー」 は銃を、獄寺はダイナマイトを手に構える。僅かな緊張感のある雰囲気の中、リボーンがスタートの合図を切った。 「いいか、どちらかが攻撃を食らった時点で終了だぞ。それじゃ、はじめだ!」 リボーンの声と同時に、はすばやくトリガーを引いた。獄寺の足元に弾丸がのめりこむ。の牽制にひるむことなく、獄寺もダイナマイト宙に投げた。 「へっ、どうだ!」 障害物の無い河川敷では身を隠すことが出来ない。動こうとしないに、誰もが爆撃は免れないと思った。 しかしダイナマイトはの所に届く前に、空中で全て爆発した。の弾丸がダイナマイトを捕らえたのだ。 「凄い……」 「転入生、なかなかやるなー」 綱吉、山本が感心する。動いてる物を性格に撃ち落とすには、かなり技量がいる。 「ちょっと甘いんじゃないの?」 爆煙が晴れたところで、は獄寺を狙い弾を撃った。弾は獄寺の足元を掠める。 「そっちこそ、足元ばっか狙っても無駄だぜ」 「そうね」 これまでの攻撃から、には銃で攻撃を当てる気はないのだと獄寺は思っていた。ああしてダイナマイトを回避しながら、隙を見て接近戦に持ち込むつもりなのだろう。それならこっちから攻め込んでやる。そう考えて、獄寺は再びダイナマイトを投げつけた。そして、素早く追撃用の小さい物も投げつける。 「無駄よ」 獄寺の予想通り、は第一撃を銃で撃ち落とした。あたりに黒煙が立ち込める。接近戦に持ち込むつもりなら煙に紛れて来るだろうと、獄寺は踏んでいた。そこに先ほど投げた第二撃が当たる、という計算だった。 「――私の勝ちよ」 「なっ……!」 コン、と獄寺の胸に何かが当たった。ぽとりと地面に落ちたのは、おがくずを柔らかく固めた弾だった。 いつの間にかの手にはもう一丁、銃が握られていた。 「本物だと怪我するから…弾はそれだし、銃の威力も最低限にしたの。これでもいいでしょ?」 「あぁ、勝負ありだ。これでも10代目ファミリーの仲間入りだな」 リボーンはそう言ったが、獄寺は抗議の声を上げる。 「リボーンさん!俺はまだやれるし、こんなんじゃ納得できません!」 「獄寺君、もう充分だよ!」 爆薬と弾丸の飛び交う勝負に、二人が怪我をするんじゃないかとハラハラしていた綱吉は獄寺を止めた。が最後に撃ったときの銃声は肝が冷えるものだった。綱吉はが撃ったのが本物じゃなくて、ほっとしていた。 「それじゃあ、改めて……みんな、これからよろしくね」 「おう!」 「うん、よろしく」 山本、綱吉と握手を交わして、は獄寺に手を差し出した。勝負になっとくがいっていないのか、獄寺は不機嫌だった。握手してもらえないんじゃないかとが思ったとき、獄寺の手がの手を握った。 「しょーがねぇから認めてやらぁ。10代目に迷惑掛けんじゃねぇぞ!」 憎まれ口を叩かれても、仲間として認めてくれる。それが嬉しくて、は頷いた。 「うん、ありがとう」 「へっ」 振り払うように手を離されても、はもう気にしなかった。 |
BACK NEXT TOP |