2.午前十一時の衝撃 日曜日だ。 本当はもう少し寝ていたいところを、綱吉は目を擦って我慢した。人と会う約束をしてしまったから、起きるよりほかにない。 ベッドから抜け出すと、いつものように先に起きていたリボーンと目が合った。 「ようツナ、やっと起きたか」 「おはようリボーン」 欠伸をしながら朝の挨拶をして、着替えを済ます。それから顔を洗って、リビングへ向かった。家の中はやけに静かで、そういえばランボやイーピンはハルの家に遊びに行くのだと言っていたのを綱吉は思い出した。ビアンキの姿もなく、どうやら母親しかいないようだった。 「おはよー」 「あら起きたの。朝ご飯、テーブルにあるからね」 洗濯物を抱えて、母親は庭へ下りていった。一人分残された朝食を見て、綱吉は席に着いた。目の前にリボーンが座ったけれど、彼はもう朝食を済ませている。 「ツナ、今日はバジルに呼ばれてるんだろ?」 「うん。大事な話って言ってたけど、何なんだろう」 もう冷めてしまっている目玉焼きを突付きながら、綱吉は考える。ボンゴレ絡みなのは間違いないけれど、物騒な話は御免だ。リング争奪戦も終わったばかりだし、しばらくああいうのには関わりたくない所である。 「あー、変な話じゃないといいんだけどなぁ」 渋い顔をする綱吉とは反対に、リボーンはいつも通りに飄々としている。 「まぁ悪い話ではないと思うぞ」 「何でだよリボーン」 「勘だ。とにかく行けば分かることだから、そう心配すんじゃねぇ。それより、時間は平気なのか?」 時計に目をやれば、十時半を数分過ぎたところだった。 「よっよくないよ!遅れる!」 「じゃあとっとと食え。行くぞ」 「待ってよりボーン!」 残りのご飯をかきこんで、慌てて立ち上がる。歯磨きなどの身支度を全て終えて言えを飛び出したのは、約束の時間まであと十分を切ったときだった。 並盛駅で十一時に待っています、とバジルは言っていた。バジルの性格からして、遅れて来るなんてことは考えられない。家から駅までの道のりを、綱吉は懸命に走った。努力の甲斐あってなんとか十一時に間に合い、深呼吸をして呼吸を整えた。 「よかったな間に合って」 「はあぁぁ疲れたー…。なんとか間に合ったけど…バジル君は……あ、いたいた」 バジルの姿は駅の表にあるカフェにあった。綱吉に気がついたバジルが手を振って合図を送ってくる。 「沢田殿!」 「バジル君!ごめん、待たせちゃったみたいで……」 「ツナのやつ、寝坊しやがったんだ」 「リボーン!」 「いえ、大丈夫ですよ」 そんな綱吉とリボーンのやり取りにバジルは微笑んで、綱吉達にも席を勧めた。このままこのカフェで話を進めるなら、物騒な話ではないと思って綱吉は内心ほっとした。 でも――バジルの隣にいる女の子は誰だろう。 彼女の方をちらりと見るつもりが、まともに目が合ってしまい、綱吉はあわてて視線をバジルに戻した。 「ば、バジル君!あの……この人は…?」 「あぁ、彼女が――」 言いかけたバジルの言葉を、彼女がさえぎった。 「はじめまして、私は。あなたが10代目の沢田綱吉で、そっちがリボーンね?」 じっと綱吉の目を見て、は訪ねた。綱吉が首を縦に振ると、はそうなの、と言ってアイスチョコレートを一口飲んだ。 「私のこと、何か聞いてる?家光様は10代目に私のことをお話した?」 綱吉とリボーンは顔を見合わせる。二人とも何も聞いていなかった。話が読めない様子の二人を見て、更にバジルが首をかしげた。 「お二人とも、親方さまから聞いてないんですか?」 「……何を?」 聞きたくないような気もするけれど、聞かないわけにもいかなくて、綱吉は聞き返した。嫌な予感は気のせいだと思いたい。 「私が、あなたの婚約者になったってこと」 想像もしなかった言葉がりの口から出て、綱吉は一瞬固まった。その横で、リボーンはニッと笑う。 「こっ……婚約――!?」 綱吉の叫び声が響いた。 |
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