12.瞼に浮かぶのは 「う……ここ、は」 が目覚めたのは、薄暗い、倉庫のような場所だった。天井は高く、届く範囲に窓は付いていない。 男に打たれた首が少し痛んだが、幸いなことに怪我はなかった。はゆっくり立ち上がると、大きな鉄の扉に近づく。両手で力の限り押してみても、びくともしない。 「当たり前、か」 一つため息を落として、はまた倉庫の中心へと戻った。床に積んであったダンボールを背もたれにして座り込む。自分一人の力で脱出できないなら、何をしたって体力を無駄に消耗するだけだ。 今は何時くらいなのだろうと、は考えた。京子の家を出ようとしたときが六時過ぎだった。天井近くの壁にある窓からは、ほんのり月灯りが差し込んでいて、もう夜中だということが窺えた。 気を失っていた所為か、眠たくない。そうじゃなかったとしても、どこか分からない敵のテリトリーで眠る気には流石になれない。 ――京子ちゃんは、あいつらに何もされなかったかな……。 が気を失う直前に見た男たちの様子では、二人ともを京子だと信じたようだったし、それほど本当の京子に興味を示した様子はなかった。また、もしも京子も捕らえられたのなら、この倉庫に一緒に入れられたはずだ。そう考えて、は京子はきっと無事だと自分に言い聞かせる。 ――大丈夫、京子ちゃんはきっと無事だ。それに、京子ちゃんは絶対にこのことを綱吉やリボーンに伝えてくれる。 京子の話を聞いたら、きっとすぐに綱吉が探してくれる。何よりも、仲間の為に一生懸命になる人だ。 「……だから、大丈夫だよ」 は膝をぎゅっと抱えて、瞳を閉じた。 夜の並盛町を綱吉は走っていた。 夕方、京子が家に走ってきてが連れて行かれたと告げたとき、胸騒ぎはこれだったのだと確信した。たまたま新技を披露しに来いていた獄寺に京子を家まで送るように頼むと、綱吉は家を飛び出した。その後をリボーンも追う。 「ツナ!当てはあるのか?」 「わからない……けど、こっちだと思う!」 確証はない。それでも走る綱吉を、リボーンは止めなかった。おそらく、合っているから。綱吉が拾ったナイフから、リボーンは独自に不信人物の影を調査していた。ほんの短い時間だったから大したことは調べられなかったが、今綱吉が向かっている方角の、もう使われていない倉庫に最近出入りしている人影があると情報を掴んでいた。 「く……っ、!」 ならきっと無事だと分かっている。きちんとした戦闘訓練を積んで来ただろう彼女が、あっけなくやられてしまうわけはない。それでも怪我をしていないか、酷いことをされていないか、不安でたまらなくなる――に何かあったら、どうしようと。 「無事でいてくれ……」 遠くに見えてきた倉庫を目指し、綱吉はまっすぐに走った。 |
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121105