12.

 二人がダンスパーティーの会場に行くと、受付にいたのは竜司だった。 廉造と一緒に来たを見て、竜司はよかったな、と安心したように笑った。廉造のことも、やっと分かったか、とからかった。
 会場の中では、子猫丸と会った。話すことはできなかったものの、子猫丸も二人におめでとうと言うように笑顔を見せて手を振ってくれた。
 多くのカップルでにぎわう会場に、音楽が流れ出すと、みんな楽しそうに踊り始めた。 たちも、初めてのダンスに戸惑いながらも、見よう見まねで踊ってみる。 曲に合わせて、なんとなくそれっぽい動きをしつつ、ふいに廉造が口を開いた。
「なぁ。俺、も一個、に言いたいことあるんやけど」
「なに?」
「俺のお嫁さんになってや」
 は花がほころぶように笑った。ワンピースの裾を翻してくるりと回ると、そのまま廉造にきゅっと抱きついた。

 京の春、絢爛の中をバスは進む。窓からの景色を眺め、は胸に暖かいものが込み上げるのを感じていた。 道沿いの商店も、舞う桜の花びらも、明日からは当たり前のように生活の一部になる。
 この春、無事に高校と祓魔塾を卒業したは、今日からまた京都で暮らし始めるのだ。
今日は、そのお祝いにと、虎屋で宴会が設けられる。は虎屋の最寄のバス停で下車すると、すぐ目の前に見慣れたピンクの髪を見つけた。
「廉造!」
ー!待っとったで。迎えに行けんで、堪忍な」
「ううん、大丈夫だよ」
廉造と並んで虎屋の門前まで来ると、は歩みを止めた。
「学校でも、毎日会ってたけど……今日から一緒の家で暮らすんだなぁって思うと、なんだか夢みたい」
がそう言うと、廉造はくにゃりと笑った。
「夢やないで。今日から改めて、よろしゅうお願いしますわ、奥さん?」
「――はい。こちらこそ、よろしくお願いします……私の、旦那さん」
 二人はくすくす笑い合うと、手を取り合って虎屋の暖簾を潜った。
 絢爛の京の春、たくさんの人に祝福されて、の新しい生活が幕を開ける。
<終>
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130728