弾丸に込められたもの



、お誕生日おめでとう!!」
「わっ、ありがとう!」
私の二十歳の誕生日を一番にお祝いしてくれたのはルッスーリアだった。薄いピンクのバラを中心にまとめられた可愛い花束を朝一番にもらって、誕生日を迎えたんだなと実感した。
ももう大人なのね〜。がヴァリアーに入ってきたころが懐かしいわ。あの頃はあなたが幹部になるなんて想像もしなかったわよ」
私がヴァリアー所属になったのは15歳のときで、幹部に昇格したのは18歳になったばかりの頃だ。自分でもまさかこんな立場になるなんて想像していなかった。人生何があるか分からないものだなぁ。
「それじゃ、また夜にね」
「うん。いってらっしゃい、気をつけてね」
仕事に出かけるルッスーリアを見送って、私は談話室に向かった。


談話室ではベルにスクアーロ、それにレヴィがくつろいでいた。マーモンも休みだって言ってたし、今日仕事があるのはルッスーリアだけみたいだ。
「お、じゃねぇか。どうだぁ、一つ年くった感想はよぉ」
「そんな急に昨日までと変わるわけないじゃない」
「ししし、そりゃそうだ。ま、とにかくおめでとう、
「……おめでとう」
「ありがとう!」
みんなが誕生日を覚えててくれて、祝ってくれるのが嬉しい。ボンゴレの超精鋭ヴァリアーの幹部がこういう人達だったなんて、ヴァリアーに入った頃は全然思わなかった。
「ほらよ、俺らからプレゼントだ。受け取れぇ」
「え、ありがとう!嬉しい!」
スクアーロが足下に置いてあった紙袋から、赤いリボンが掛けられた箱を2つ取り出して渡してくれた。なんだろう?受け取ってみると、片方の箱はずしっと重かった。
「あけてもいい?」
「そりゃもちろん」
リボンをといて包装紙を開けると、中から現れたのはワインの瓶とチョコレートだった。チョコレートは私のお気に入りのやつで、覚えててくれたのにちょっと驚いた。もう1つのプレゼントのお酒は、飲んだことがないわけじゃないけど、20歳の誕生日はやっぱり特別な日なんだというのを感じさせてくれる。
「みんなありがとう!今日の夜、さっそく楽しませてもらうね」
「…あぁ」
さて、いったん部屋に戻ってもらったプレゼントを置いてこよう。花を生けないと萎れてしまうし、この荷物では何かと大変だもの。


「やぁ、誕生日なんだってね、おめでと」
花束と紙袋を抱えて自室へと戻る途中、マーモンに声をかけられた。
「マーモン。ありがとう」
「今調度呼びに行くところだったんだ。ボスがお呼びだよ」
確かに伝えたから、と言ってマーモンはすぐふよふゆ宙を泳いでいってしまった。
「ボスが?なんだろう…」
また仕事か、それとも単なる雑用かな。あんまり待たせると機嫌が悪くなるから急がないと。
とりあえず花だけを適当に花瓶に入れ、私はボスのいる執務室に急いだ。


「ボス、です。お呼びですか?」
執務室の扉をあけると、いつものようにボスが椅子にふんぞり返っていた。少し遅くなってしまったから怒っているかもしれないと思ったけど、意外にそうでもないようだった。
「遅ぇよ……まぁいい」
「何か私に仕事ですか?それとも雑務ですか?」
「違う」
じゃあ何だろう。ボスからそれ以外の理由で呼び出されたことはない。私が首を傾げていると、ボスは私に何か箱を差し出してきた。
「この箱がどうかしたんですか?…………もしかして、」
まさかと思ってボスを見ると、ボスはうなずいて一言『くれてやる』と言った。ボスから誕生日プレゼントなんて想像もしていなくて、私は言葉をなくすくらい驚いた。
「いらねぇのか?いらねぇなら、」
「戴きます!ありがとうございます。……あの、中を見ても?」
「あぁ」
スクアーロたちのくれた物とは対照的に、リボンも包装もない質素な箱の蓋を開ける。中に入っていたのは予想外の物で、私はまた驚いた。
箱の中身は弾丸だった。
私が愛用している銃にぴったりの弾丸がボスからの誕生日プレゼントだった。弾丸は誕生日のイメージとはかけ離れている……ボスは何を思って弾丸をくれたんだろう。
「あの、ありがとうございます」
「使えよ。死なれちゃ困るからな」
「はい」
弾丸をくれたのは死なれちゃ困るから――言い換えると『無事に帰って来い』。
本当にそうかは分からないけれど、もしボスがそう思ってこの弾丸をくれたのなら最高のプレゼントだ。
「ボス、」
「なんだ?」
「私、何があってもきっとボスのところに戻ってきます」
「――当然だ」
私の言葉にボスは満足げな顔を見せてくれて、その表情で私はこの弾丸に込められたものを確信した。
101105