Please say I love you.



「かーんーだー。ねぇねぇ神田ってば!」
自分の部屋と勘違いしているのかと思いたくなるほど当然のようにベッドを占領するに、神田は頭を抱えていた。任務から帰ってすぐに報告を終わらせ、一番に自分のところに来てくれたのは嬉しい。けれど、これは何なのか。
「ね、神田。私のこと好き?」
何故いまさらそんなことを言わなければいけないのか。そうじゃなければとっくに部屋から追い出している。にだってそれは分かっているはずだ。どうして女というやつは分かりきった答えを求めるのか、神田には理解できない。
…静かにしていろ」
ソファに腰掛けてコムイに渡された次の任務の資料に目を通している神田はの方を見ずに言った。もう読み終わっててもいい筈の資料はまだ半分ほど残っている。言われたとおりが黙ると、部屋には妙な空気が漂った。妨げになっていた質問も止んだというのに、一向に読み進まない。横目でベッドの方を見ると、がしょげて俯いていた。
「おい……」
「神田、私のこと嫌い?」
不安そうな顔でじっと自分を見つめるに神田は資料を脇へ置くと向き直った。どうも様子がおかしい。今までがこんな態度をみせたことはなかった。
「そんなこと言ってないだろ。ったく、どうしたってんだ」
「だって神田、私のこと好きって言ってくれたこと一度もない」
抱き寄せてキスするなら何度だってしている。気付いたときにはそういう関係になっていたし、好きだの愛してるだの言う必要を感じていなかった。神田ももそうだったはずなのに、どうして目の前の少女は泣き出しそうな顔をしているのか。
「言わなきゃ嘘ってわけじゃねぇだろ」
「そうだけど…でもね、アレンに神田と付き合ってるのか訊かれて、そういえば言ったことないなって思って、何か不安になって、返事できなかった……」
「あのモヤシ、余計なこと言いやがって…」
その光景が目に浮かび、小さく舌打ちする。神田はに近付くと、顎を持ち上げて唇を重ねた。お互いの熱が伝わり、離れる。そして、耳元で囁く。
「好きだ」
頬を染めてまた俯くが可愛くて神田はベッドに手をついてもう一度キスをする。先ほどより深いそれにが身を捩る。
「言って欲しいくせに、言うと照れるのな」
「だ、だって初めて言われたんだから…」
ますます頬を赤く染めるに理性が揺らぎ、神田は方膝をベッドについてを軽く押し倒して覆い被さった。いきなりのことに状況を理解できていないの口をふさぐ。ベッドが軋んで音を立てた。
「ん…神田、やっ…」
「そんな顔してそんなところにいるのが悪い。…おまえは俺のものだって解かってないみたいだしな」
「もう解かった!解かったよ!ちょ、神田、都合いいことしないで…っ」
団服の釦を外そうとするのに抵抗しようとするが、力の差は明らかだった。両手でも敵わないだろうに、自由が利くのは片手だけ。敵うはずがない。
「やだ!神田!やめ―――」




「カンダ、次の任務について聞きたいことが…」




「アレン!」
突然の訪問者に気を取られた隙をついてはベッドから抜け出し、はだけた団服を抑えて室外へ出て行った。信じられない、というような目つきのアレンに、気まずい思いをしながらも神田は口を開いた。
「おいモヤシ、こういうことだ。解かったか」
「そんなこと言われても嫌がってたみたいですし」
とても任務について話すような雰囲気ではない。出直すことにしたアレンは部屋を出ようとして、立ち止まった。
「油断しない方がいいですよ、カンダ」
「その自信、すぐ消してやる」
の知らないところで宣戦布告の声が響く。

05/11/6