普通に朝食を取っていただけだったのに! 02 悪戯心に蜂蜜 イタリアの日曜日は、全面的に休日だ。ボンゴレはマフィアで、言ってしまえば自由業なわけだから、さすがに完全休日というわけにはいかない。それでも平日に比べればかなりのんびりしたものである。 日曜日の朝食は綱吉と二人で取るのが、イタリアに来てからの習慣になっている。いつもより遅い時間に起きたら、厨房で焼かれたパンを貰ってきて軽い朝食にする。焼きたてのパンはそのままでも美味しいけど、バターとかジャムとかを塗るのも美味しい。それで今日は蜂蜜を一緒に貰ってきたのだけど、思い返してみると大失敗だった。 「、手に蜂蜜ついてるよ」 「うん、分かってる」 気をつけていたつもりだったのに、パンを持っていた左手に付けてしまった。塗り終わってから拭けばいい。そう思って、とりあえず放置しておく。 そんな私を綱吉は持っていた紅茶のカップを置いて、じっとを見ていた。私のことは気にしないで、自分の分を食べていればいいのに。パンに蜂蜜を塗るという、別に何と言うこともない行為をじっと見られてるのはなんだか落ち着かない。 「綱吉」 「なに?」 「あの、こっち見るの、やめてくれない?」 「なんで?」 「だって何か気になっちゃうんだもん。気にしないで食べてなよ」 「でも、俺だって気になっちゃうし」 満面の笑みを浮かべる綱吉は、はっきり言って怪しい。絶対何か変なこと考えてる。さて今日は一体何を考えてるんだか。蜂蜜を塗り終わってパンを一度お皿に置いたところで、私の腕に綱吉の手が伸ばされた。嫌な予感はあたりだったようで、綱吉はくすりと笑みを浮かべると、私の左手に口付けた。そうされると分かっていたのに、その瞬間に微かだけど身体が震えてしまった。 「綱吉、やだ」 止めて、という私の声を聞かずに、綱吉は僅かに蜂蜜のついた箇所に舌を這わせた。どうしようもなく恥ずかしい気がしてきて、綱吉の手を振り払う。意外にあっさり解放してもらえたけど、頬が熱いのが自分でもはっきり分かるのがまた、私の羞恥を加速させた。そんな私とは正反対に綱吉は満足そうに笑っている。 「は可愛いね」 「……綱吉は意地悪ね」 「そうかな?」 首を竦めてとぼけてみせる綱吉に私はもう敵わないと諦めて、蜂蜜付きのパンに噛み付いた。 |